< 第15回 からくり箱アイデアコンテスト入賞作品 >
第15回 ワクワク大賞 「乾杯!!」
発案者:大瀬 美鈴(神奈川県)
製作責任者:川島 英明(からくり創作研究会)
ビールジョッキの形をしたからくり箱です。泡がいまにも溢れそうです。
原案ではジョッキは1つでしたが、やはり2つが適しているだろうという事で2つにしました。
そのため制作数が倍になり、短い期間で制作する工夫が数多必要でした。
非常にシンプルな作品です。
パズルというより、コミュニケーションツールとしてご活用ください。
ガラスほどの強度はありませんので、それだけはご注意を。
さて、ではジョッキを持って…
第15回 デザイン大賞 「あみだくじ」
発案者:飯島 健(神奈川県)
製作責任者:杉本 昇(からくり創作研究会)
箱の表面には数種類の木材が使われており、はしご状の模様があみだくじになっています。
仕掛けを動かすことでそのくじ結果が大きく変わっていきます。
数多くのパターンの中からそれぞれの線の行き先が正しくなる組み合わせを見つけることができるでしょうか。
*あみだくじとは
線のはしに当たりはずれなどと書いて隠し、各自が引き当てるくじのこと。
平行線の間に横線を入れはしご状にすることが多い。(wikipediaより)
第15回 お気に入り大賞 「はい、ポーズ!」
発案者:渡辺 千愛(大阪府)
製作責任者:岩原 宏志(からくり創作研究会)
茂みの間からうさぎの写真を撮ろうとしています。
でも、まだうさぎはファインダーに収まっていません。
どうすれば、うまくうさぎを撮影する事ができるでしょうか?
いきなりシャッターボタンを押しても、引出は開きません。
ふと見ると、カメラを置いた台の横にニンジンが顔を出しています。
ニンジンがあるということは…?
第15回からくり箱アイデアコンテスト審査講評
応募アイデアの第一次審査をさせて頂いた4人の審査員の内の一人、高島直昭です。
このたび入賞されました皆様おめでとうございます。
そして、アイデアを現実のからくり箱として仕上げてくださったからくり創作研究会の職人の皆様ありがとうございます。
このアイデアコンテストも今回で15回目、また、からくり創作研究会の主催で行われるようになってから5回目になります。
全国から応募いただいたアイデアの件数は合計276件という最近にない多数になりました。
今回も前回同様、坂本忠之、小野澤力(つとむ)、岩原宏志、そして私の4人が審査員として第一次審査を行わせていただきました。しかし、2020年から行っていたようにコロナ感染状況を考慮して審査員が自宅等で個別に審査するのではなく、小田原の新装成ったからくり工場の一室に集まって討議しながら審査するという方法で行うことができました。
第一次審査の結果は、詳細設計および製作を担当されるからくり創作研究会の職人の皆さんによる第二次審査に引き継がれて入選作品を決定した次第です。
第一次審査では、応募されたアイデアを、当然ながらどこの誰からの応募作品であるかを知らされずに全部一つずつよく拝見させて頂いて検討しました。
応募頂いたのは、完成したからくり箱ではなく、それがどのように動作するのかというアイデアでありました。
そこで、第一次審査にあたっては、そのアイデアが他人のまねではないものであることや、一筋縄では開けることができないものであるということだけではなく、それができたら沢山の人が楽しむことができるかどうかも考慮しました。
こうして選ばれた作品について職人の皆さんによって、それが、アイデアの趣旨を生かしながら本当に製作できるものなのかどうかについての検討も含んだ第二次審査を行って、3つの作品の入選を決め、それを発案者と相談しながらみごとなからくり箱として実現していただきました。
これらの入選作品には、それぞれ異なる名前の賞が与えられています。これまでは、それを決定するのに、公開の場に展示して、一般の皆さんに投票いただくという手順をとっていました。このため、入賞作品を皆様のお手元にお届けするのが大変、遅くなってしまっていました。そこで、今回は、第二次審査で入選作品を決定すると同時に、それにふさわしい賞名も決めさせていただきました。
毎年申し上げていることですが、入選作品に与えられた賞の間には上下の順位はありません。3つの作品それぞれが、順位の付けられない個性的なすばらしさを持っている作品であります。皆様もその実物に触れて作品のすばらしさ、楽しさを味わっていただきたいと思います。
今回は、入選3作品のうち2作品は大人の作品、1作品が若者の作品となりました。その3作品は、それぞれ異なる魅力がある革新的なアイデアの作品です。
ワクワク大賞の「乾杯!」と、お気に入り大賞の「 はい ポーズ!」は、日常のちょっとした体験をとらえて、からくりのアイデアを思いついたものではないかと思いました。魅力的なからくりのアイデアを着想する日頃の心がけがどうあったらいいのかのヒントがここに隠されているように感じます。
一方、デザイン大賞の「あみだくじ」は、あくまで、私個人の印象ですが、時間をかけて面白いからくりのアイデアを育てたのではないだろうかと思いました。
今回、第一次審査が終わった後、工場の一室に展示されていた、過去のアイデアコンテスト入選作品とからくり創作研究会会員のプロの作品を同時に拝見させてもらう機会がありました。
そこで、この両者は、どこか印象が違うと感じましたが、この印象は、私だけのものではないようでありました。
おそらく、これらアイデアコンテストの入選作品群は、普段から独創的なアイデアのからくりを作り続けているプロ達にも、よい刺激を与えているものと思われます。
なお、このコンテストは、4月1日から翌年3月末日までの1年間を応募期間のひと区切りとする常時募集で、大人も子供も普段から考えているアイデアやふとしたことから思いついたアイデアをいつでも応募できます。これからもこれまでにない新しい、そして楽しいアイデアが寄せられることを期待しています。
最後に、このコンテストを支援くださっておられる多くの皆様方に感謝してこの審査報告を終えたいと思います。
2023年7月吉日
髙島直昭